魚と本と江戸の匂い
- 庵主

- 2月1日
- 読了時間: 2分
更新日:2月13日
店主庵主より 探し物の行方のこと
古書店というのは 不思議なものでしてね。軒先に棚がひとつ置いてあれば それだけで「旅」が始まるんです。
あたしぁ七年ばかり 魚と本と江戸——この三つの匂いを追いかけて 棚の上下左右を速写するように眺め 背表紙が呼んでくれば手に取り 目次をまるで市場の品書きみたいに流し読みし 自分の探し物が潜んでいれば連れて帰る。そんなことを 飽きもせず繰り返してきました。
はじめは 魚の歳時記に答えがあると思い込んでいたもんです。季節ごとに変わる「魚の顔」を見れば その裏に文化の源流があるだろうと。ところが 読み進めるうちに視点はいつしか料理や食べ物の歳時へと移り さらにその奥で「食べるという行為は 季節と組んず解れつなんだ」という当たり前の事実に ようやく気づくわけです。
いやぁ なんとも遠回りでした。けれど この遠回りこそがよかった。市場の朝に漂う潮の香りと 古書店のページに染み込んだ紙の匂いとが どこかで一本の道につながっていた。それを実感した瞬間「魚と本と江戸の匂い」は あたしの中でひとつの物語になったのです。
今日もまた、どこかの棚の影に新しい「答え」が眠っているかもしれません。その気配を追いかけるのが 俺観庵主のしごとであり たのしみであります。
写真:栗本丹州 著『栗氏魚譜』第1冊 巻1, 写. 国立国会図書館デジタルコレクション


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